動向2026-05-17

外国医学部卒業者の医師国家試験ルートは変わるのか――共用試験公的化と予備試験・日本語診療能力調査をめぐる議論の整理

共用試験CBT・Pre-CC OSCEの公的化は2023年度から始まっているが、外国医学部卒業者の予備試験・日本語診療能力調査をそれで代替する制度は2026年2月時点でも厚労省の「検討論点」段階にある。現状と今後の方向性を整理する。

#医師国家試験#外国医学部卒業者#共用試験#予備試験#厚生労働省
外国医学部卒業者の医師国家試験ルートは変わるのか――共用試験公的化と予備試験・日本語診療能力調査をめぐる議論の整理
Photo by Cdn Pages on Unsplash

要約

  • 共用試験CBT・Pre-CC OSCEは2023年度(令和5年度)より公的化されており、国内医学部生にとっては臨床実習・医師国家試験受験資格と連動する制度になっている。1
  • 厚労省の2020年11月報告書では、外国医学部卒業者の予備試験・日本語診療能力調査を共用試験で代替する方向性が示されているが、具体的な適用時期の確定や全面移行の完了は、2026年2月時点でもなお確認されていない。2

外国医学部卒業者が医師国家試験を受けるための現行の仕組み

海外の医学部を卒業して日本の医師国家試験を受験するためには、まず厚生労働省による「医師国家試験受験資格認定」を受ける必要がある。厚労省は、外国医学部卒業者について申請者ごとに教育内容や能力等を審査するとしており、特定の外国医学部の卒業生に対して一律に受験資格を認定するものではないと明記している。3

出典: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56664.html

受験資格認定の審査において、外国医学部卒業者はこれまで医師国家試験予備試験(知識・技能を確認する試験)と、「本試験認定見込み」とされた者が受ける日本語診療能力調査(聴く・話す・書く・読み取る・診察する能力を日本語で評価する実技試験)が求められてきた。

この仕組みが、近年の共用試験公的化の流れの中でどう変わりうるのか、順を追って整理する。


共用試験CBT・Pre-CC OSCEとはなにか

日本の医学部では、臨床実習に進む前の段階で、医学生の知識を確認する共用試験CBT(Computer-Based Testing)と、技能・態度を確認するPre-CC OSCE(臨床実習前客観的臨床能力試験)が実施されてきた。

厚労省の医師国家試験改善検討部会報告書によれば、共用試験CBTおよびPre-CC OSCEは平成17年(2005年)からCATOにより実施され、すべての医学生が臨床実習前に受験しているとされている。1

出典: https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-idou_127792.html

つまり、共用試験そのものは2020年代に新設された制度ではなく、長年にわたって医学部教育の中で機能してきた試験である。後に行われた「公的化」とは、この試験に法的根拠を与え、医師養成課程における正式な位置づけを付与する手続きであった。


2020年11月:報告書が示した外国医学部卒業者への方向性

現時点で厚労省のページで確認できる「医師国家試験改善検討部会報告書」の最新版は、**令和2年11月(2020年11月)**のものである。2

出典: https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-idou_127792.html

この報告書は、外国医学部卒業者に関して次の方向性を示した。

予備試験について

報告書は、医師国家試験予備試験が「日本の卒前教育における共用試験CBTおよびPre-CC OSCEに相当する」と整理したうえで、共用試験CBTおよびPre-CC OSCEが公的化された場合には、予備試験の代替として共用試験CBTおよびPre-CC OSCEを課すことが妥当としている。

日本語診療能力調査について

同報告書では、日本語診療能力調査の代替として、Pre-CC OSCEに加えて筆記試験を受けさせることで、日本の医学生と同等以上の能力を確認することが当面妥当とされた。

ただし、この2020年報告書の段階では、共用試験CBT・Pre-CC OSCEはまだ「今後、公的化された場合」という前提で語られていた。制度変更の方向性を示してはいるが、この時点で外国医学部卒業者への置き換えがすでに施行されたわけではない。


2021年・2023年:医師法改正と共用試験の公的化

その後、令和3年(2021年)5月、医療法等の一部改正に伴い医師法も改正された。厚労省資料によれば、改正後の医師法において以下の施行が定められている。

  • 共用試験に合格した医学生が臨床実習において医業を行うことができる:令和5年(2023年)4月1日施行
  • 共用試験の合格が医師国家試験の受験資格要件になる:令和7年(2025年)4月1日施行

そして**令和5年度(2023年度)**より、公的化された共用試験(特にPre-CC OSCE)が実施開始された。1

この流れにより、共用試験CBTおよびPre-CC OSCEは、単なる大学間の共通試験から、医師養成課程における公的な位置づけを持つ試験へと変わった。国内医学部の医学生にとっては、共用試験の合否が臨床実習や国家試験受験資格と連動する制度になっている。


2024年:公的化後の改善議論も並行して進む

共用試験は公的化されて終わりではなく、令和6年(2024年)10月7日の医学生共用試験部会資料では、令和5年度の実施状況を踏まえ、令和7年度(2025年度)以降のOSCEの課題数や評価体制などを検討している。

共用試験は制度として公的化されているが、その内容や運用は継続的に調整されている段階でもある。この点は、外国医学部卒業者への適用を検討するうえでも重要な文脈となる。


2026年2月:外国医学部卒業者への適用は「今後の論点」

令和8年(2026年)2月4日に開催された医師国家試験等改善検討部会では、「医師国家試験等改善検討部会の主な論点(案)」が示された。2

これは新しい「報告書」ではなく、今後の議論のための論点整理である。この論点案では、2020年報告書の内容を引用する形で、外国医学部卒業者に対する試験について次の方向性が再掲されている。

  • 予備試験の代替として、共用試験CBTおよびPre-CC OSCEを課すことが妥当
  • 日本語診療能力調査の代替として、Pre-CC OSCEおよび筆記試験を課すことで、日本の医学生と同等以上の能力を確認することが当面妥当

さらに2026年2月の資料では、共用試験が公的化された後も、予備試験や日本語診療能力調査の代替としてこれらを課すことについて「どう考えるか」という形で、改めて論点化されている。

つまり、外国医学部卒業者については、方向性としては2020年から継続して検討されている一方で、少なくともこの資料の表現上は、すでに全面的な置き換えが完了した制度として書かれているわけではない


「2027年以降に難化する」と断定してよいか

2020年報告書では、適用時期について、「公的化後の試験を受験した日本の医学生が初めて医師国家試験を受験する際の試験から適用することが望ましい」という表現がある。

しかし、この表現はあくまで「望ましい」であり、「2027年から実施する」と具体的に確定させているものではない。2026年2月の論点案でも、外国医学部卒業者への適用は「どう考えるか」という検討段階として示されている。

そのため、「2027年以降に必ず制度変更される」「本試験認定者は2027年からOSCEと筆記試験になる」と断定するのは、現時点の公的資料の根拠からは行き過ぎと言える。

現状をより正確に表現するなら、次のようになる。

厚労省の2020年報告書では、外国医学部卒業者の予備試験について将来的に共用試験CBTおよびPre-CC OSCEで代替することが妥当とされ、日本語診療能力調査についてもPre-CC OSCEおよび筆記試験による確認が当面妥当とされた。共用試験自体は2023年度から公的化されているが、外国医学部卒業者への具体的な適用時期や移行措置については、2026年時点でも厚労省の検討論点として扱われている。


現時点で確実に言えること・言えないこと

確認できること

  1. 共用試験CBT・Pre-CC OSCEは、2005年(平成17年)からCATOにより実施されてきた。1
  2. 2021年の医師法改正を受け、2023年度(令和5年度)から共用試験が公的化された。1
  3. 2020年報告書では、外国医学部卒業者の予備試験を共用試験CBT・Pre-CC OSCEで代替する方向性が示されている。2
  4. 同報告書では、日本語診療能力調査の代替としてPre-CC OSCEと筆記試験を課す方向性も示されている。2
  5. 2026年2月時点でも、外国医学部卒業者への試験については厚労省の「今後の論点」として扱われている。2

断定できないこと

  1. 「2027年から必ず変更される」: 公的資料だけでは確定的な適用年度を断定できない。
  2. 「予備試験がすでに共用試験CBT・Pre-CC OSCEに完全移行した」: 2026年2月資料はなお「どう考えるか」という論点段階にある。
  3. 「日本語診療能力調査がすでにPre-CC OSCE+筆記試験に置き換わった」: 厚労省は令和8年度(2026年度)の受験資格認定申請案内を引き続き公開しており、現行制度は継続している。3

まとめ:次のアクションとして意識すべきこと

外国医学部卒業者の日本の医師国家試験ルートは、近い将来、共用試験CBTやPre-CC OSCEを活用する形に変わる可能性が高い方向で議論が続いている。ただし「いつから」「どのような移行措置で」という点は、2026年5月現在の公的情報では確定していない。

海外医学部への進学を検討している方、あるいは在学中の方がまず取れるアクションとしては、以下が挙げられる。

  • 厚労省の医師国家試験等改善検討部会の資料を定期的に確認する。 部会の開催情報や資料は厚労省の審議会ページ(医道審議会)で公開されている。2
  • 受験資格認定の現行手続きを把握しておく。 制度変更の有無にかかわらず、外国医学部卒業者はまず受験資格認定を申請する必要がある。申請案内は厚労省のページで年度ごとに公開される。3
  • 「制度が難化する前に急ぐ」という判断は慎重に。 適用時期が未確定な段階で、具体的な変更内容や時期を前提とした意思決定を行うことはリスクを伴う。
  • 海外医学部に所属している医学生および海外医学部を卒業した医師向け登録フォーム https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000204006_00011.html

Footnotes

  1. 厚生労働省「医師国家試験改善検討部会報告書」(令和2年11月) 2 3 4 5

  2. 厚生労働省「医道審議会(医師分科会医師国家試験等改善検討部会)」部会資料一覧 2 3 4 5 6 7

  3. 厚生労働省「外国の医学校を卒業し、または外国で医師免許を取得している方の受験資格認定について」(令和8年度受験資格認定申請案内) 2 3

🔒 続きは無料の会員登録でご覧いただけます

無料登録ですべての記事と機能をご利用いただけます。